ヘブンリー・ブルーT
著者:HOCT2001


 初めて海へ俺を連れて行ったのはおふくろだった。お袋は当時トップクラスのサーファーで俺にも英才教育をさせたかったようだ。ヨチヨチと子供用のサーフボードを抱えて海へ行ったら、お袋が『取り合えず沖までパドリングしろ』なんてぬかしやがった。恐ろしい女だ、まったく。

 とりあえずパドリングして沖まで出たのだがそこから記憶がない。おそらく波にさらわれておふくろに助けられたのだろう。

 それが10年前の俺だ。俺は16歳、私立彩桜学園の高校部に所属している。おっと自己紹介が遅れたな、俺の名前は『泉 和樹』平凡な名前だろ?親父たちよ、もっとインパクトのある名前にしてくれよ。

 ちなみに、今は午前8時。そろそろ悪友たちがやってくるだろう、と思ったら悪友その1『飯田』がやってきた。

「よう、和樹、今日はなんかテンション低いな。どした?」
「昨日どっかのバカがカラオケに午前2時までカラオケに連れ出してくれたからな」
「実にけしからんやつだな」
「お前がけしからんのじゃ」

 朝からこんな感じかよ。学校終わったらサーフィンしようと思っていたのにテンションが下がるぜ。コーヒーでも飲んでテンションあげるか。そうと決まれば自動販売機へ行ってコーヒー買いにいこ。

 自動販売機は俺の教室のある2階から降りて中庭にある。ん?自動販売機の前に人影があるじゃないか。駆け寄ってみるとクラス委員長の『小森 鏡子』さんじゃないか。彼女がコーヒー飲むなんて珍しいな、声をかけてみよ。

「小森さん、コーヒー飲むなんて珍しいね」
「あ、泉君。ちょっと資料作りに時間がかかっちゃって眠いの」
「それはお疲れ様。せっかくあったんだから伝達事項を伝えとくよ。今日の4時半から海に行くってゾエさんに伝えておいてくれないかな。職員室とおるんでしょ?」
「うん、わかったよ。海に行くんだったら私も一緒に行ったらダメかな?泉君のサーフィン見たいもの」
「俺のサーフィン見てもつまらないと思うけど小森さんが見たいって言うんだったらかまわないよ」
 
 俺がそういうと小森さんは嬉しそうに笑って『じゃあ、添本先生のところへ言って来るよ』といって別れた。さて、退屈な授業でもうけますか。俺はプロのサーファーを目指すために大学部へあがらないから本当に授業めんどくさいなぁ。

 
 さて、授業も終わり、サーフィンへ行く準備も整った。あとは小森さんが来るのを待つだけだな。小森さん委員長だから仕事多いもんな。ゆっくりまたないと。すると…

「ご、ご、ご、めんなさい、遅くなって」

 どうも猛スピードで来たらしい。そんなに走らなくても海は逃げないぞ。

「うん、じゃぁ行こうか。伯父さんの車で行くから後部座席に座ってね」
そういうと
「はい!!!」
 と元気に声を上げる小森さん。やばい、可愛いかも?

 さて、今日はいい波が来ているといいなぁ。

 車で移動すること15分、いつもの練習場へ到着する。
 さてウェットスーツに着替えますか。と、思ったら、小森さんじーーーっとこっちを観てる。や、着替えるから困るんですけど…。

「小森さん、着替えるんですけど」
「あ、あ、あ、あ、あ、そうですよね。ごめんなさい」

 どうも意外としっかりしているように見えて天然なのかもしれない。小森さんの意外な一面が見えてちょっと嬉かったりして。

 さて、パドリングで沖に出て、ボトムターンの練習でもするかな。左足に力を入れて波の下のほうへターンする。完全とはいえないけどまずまずの出来かな。
 小森さんは元気よく手を振ったり跳んだりしている。かわいいなぁ。それだけで燃えるってもんよ。こっちも気がのってトップタンやエアリアルなんかかましてみる。
 
 今日はこの程度にしようかな。
「小森さん、帰るよ」
「うん、でも本当に凄いね、泉君のサーフィン」
「プロにはまだまだだよ。もっと練習を積み重ねないとね」
 俺はそう苦笑した。



あとがき

いやぁ、久々に小説かいたら変なものができちゃいましたよ。
一応短編連作になっておりまして、今度の3連休でT,2本くらい仕上げる予定です。



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